こんにちは、市川博基です。
私は、クリーニング業界がいまだに「技術」を商品として売ろうとしているから、縮小していくのだと思っています。
もちろん、クリーニング技術が必要ないという話ではありません。
汚れを落とす。
シミを抜く。
衣類を傷めず、きれいに仕上げる。
それはクリーニング店として、できて当たり前です。
技術は絶対に必要です。
ただ、技術があることと、商売として選ばれることは別の話です。
市場が変わったのに、売り方が変わっていない
ユニクロをはじめとするファストファッションが世の中に広がり、服は以前より安く、気軽に買えるようになりました。
クリーニング店の主力商品だったワイシャツも、今では家庭で洗えて、アイロンもほとんど必要ないノンアイロンシャツに置き換わっています。
つまり、以前と比べてクリーニングの需要そのものが減っています。
市場規模が小さくなっている。
それなのに、いまだに、
「初回ワイシャツ100円」
「ワイシャツ半額」
という安売りを続けている店があります。
正直、私は思います。
ワイシャツを何枚洗ったら、利益が出るつもりなんだろう。
需要が減っている商品を、さらに安く売る。
それで経営が苦しくなり、
「クリーニングを利用する人が減った」
と言っていても、当然ではないでしょうか。
市場が変わったのなら、売るものも変えなければならない。
昔と同じ商品を、昔と同じ方法で、さらに安く売り続けても、先細りしていくだけです。
私はもう、
「うちは、きれいに洗えます」だけでは商売にならない時代だ
と思っています。
技術は商品ではなく、価値を届けるための土台
誤解のないように言っておくと、技術を軽視しているわけではありません。
技術がなければ、お客様の大切な品物を預かることはできません。
ただ、お客様が本当にお金を払っているのは、洗剤の種類でも、機械の性能でも、職人の技術そのものでもないと思っています。
わざわざ札幌にある小さなクリーニング店を探し、遠方から品物を送り、決して安くはない料金を払ってくださる。
単に汚れを落とすだけなら、近所のクリーニング店でもいいはずです。
最新設備を備えた、大資本のクリーニング会社でもいい。
それでも、私たちの店を選んでくださるお客様がいます。
そこには、価格や設備だけでは説明できない理由があります。
お客様が残したいのは、物ではなく「想い」
分かりやすいのが、ぬいぐるみのクリーニングです。
同じ種類のぬいぐるみを新品で買った方が、間違いなく安い。
新品価格の数倍の料金を払って、クリーニングをご依頼いただくことばかりです。
経済合理性だけで考えれば、買い替えた方がいいでしょう。
でも、お客様がきれいにしたいのは、同じ種類の新品ではありません。
そのぬいぐるみでなければ意味がないのです。
子どもの頃から一緒だった。
大切な人にもらった。
家族との思い出が詰まっている。
物としての価値だけではなく、その物に込められた想いがある。
だから、新品を買うより高い料金を払ってでも、もう一度きれいにしたいと思ってくださる。
カナダグースなどの高級ダウンも同じです。
ただ洗うだけなら、設備の整った大きなクリーニング会社はほかにもあります。
それでも、わざわざ私たちの店を探して依頼してくださる。
気に入っているから手放したくない。
もう一度きれいに着たい。
これからも長く使いたい。
私たちがお金をいただけるのは、汚れを落としたからだけではありません。
その品物に込められた想いを、これから先にも残せるようにするからです。
洗浄も、シミ抜きも、補色も、修理も、そのための手段です。
技術そのものを売っているのではなく、技術を使って、大切な物と想いを守っている。
私はそう考えています。
「長く着る」は、使用年数だけの話ではない
私たちのホームページには、
どこよりも「綺麗」をお届けし、
お気に入りを“長く着る”ためのクリーニング。
という言葉を掲げています。
「長く着る」というのは、単に使用年数を延ばすという意味ではありません。
お気に入りを手放さずに済むこと。
思い出の詰まった物を、これからも使えること。
「捨てなくて良かった」と思ってもらえること。
その物に込められた想いを、次の時間へつなぐこと。
それが、私たちが提供したい一番の価値です。
商売は、困りごとを解決した対価としてお金をいただくこと
私は、商売とは、
人の困りごとを解決した対価として、お金をいただくこと
だと思っています。
クリーニング店だからといって、洗うことだけで価値を作る必要はありません。
お客様の困りごとが、汚れだけとは限らないからです。
自分では洗えない。
近くのお店では断られた。
きれいにしたいけれど、どう依頼すればいいか分からない。
料金が分からなくて不安。
店舗へ行く時間がない。
営業時間内に受け取りに行けない。
預けている間に使う物がない。
一つの困りごとを解決すると、その先に別の困りごとが見えてきます。
私たちは、その解決範囲を少しずつ広げてきたのだと思います。
メールからLINEへ。写真で相談できるようにした
以前は、メールでのお問い合わせが中心でした。
現在は、LINEでのやり取りを中心にしています。
LINEなら、文章だけでなく写真も簡単に送れます。
汚れや傷みの状態、ブランドタグ、洗濯表示などを写真で確認できれば、電話で何分も説明していただくより、早く正確に判断できます。
やり取りも記録として残ります。
必要があれば、その写真や文章を担当者へそのまま共有できます。
お客様も、電話をかけられる時間を探す必要がありません。
こちらも、人の記憶だけに頼らず回答できます。
前回の思考録でも書きましたが、15分電話で説明していただくより、写真を1枚送っていただいた方が、早く正確に答えられることがあります。
メールからLINEへ変えたのは、流行っているからではありません。
その方がお客様にも私たちにも、早く、正確で、無駄が少ないからです。
「価格は要問い合わせ」で、誰が頼むのか
クリーニング業界では、特殊品の料金に、
「要問い合わせ」
と書かれていることがよくあります。
状態を見なければ、正確な料金を出せない。
その事情は分かります。
でも、お客様からすると、
価格が分からないサービスを、どうやって比較して頼めばいいのでしょうか。
問い合わせをして、
品物の説明をして、
写真を送って、
ようやく料金が分かる。
高ければ断る。
それだけで、お客様に余計な手間をかけさせています。
正直、私は思います。
価格が分からない店に、誰が気軽に頼むんだろう。
だから私たちは、できる限り最初から料金を掲載するようにしています。
もちろん、実物の状態によって追加料金が必要になることはあります。
それでも、一般的な状態であれば、だいたいいくらになるのかは先に伝えられるはずです。
多少の状態差があっても会社が損をしない価格を考え、最初から提示しておく。
そうすればお客様は、
新しく買い直すのか。
近くのお店へ依頼するのか。
私たちへ依頼するのか。
その品物に、その料金を払う価値があるのか。
自分で比較して決められます。
私は、価格を明確にすることもサービスの一部だと思っています。
安さを売るためではありません。
お客様が納得して選ぶための判断材料を、先に出しておくためです。
ECも無人ロッカーも、価値を届けるための仕組み
私たちは楽天市場などのECを通して、全国からクリーニングを受け付けてきました。
店舗へ来られない人にもサービスを届けるためです。
店頭では無人ロッカーも導入しています。
お客様がクリーニング店の営業時間に生活を合わせるのではなく、自分の都合の良い時間に預け、受け取れるようにするためです。
仕事がある。
子どもの送り迎えがある。
買い物もある。
クリーニング店の営業時間に、自分の予定を合わせたい人なんて、ほとんどいないと思います。
ならば、お店側が変わればいい。
ECも宅配も無人ロッカーも、それ自体を売りたいわけではありません。
大切な物と想いを守るという価値を、より多くの人が利用できるようにするための届け方です。
ベビーカーを洗った先に、レンタルが生まれた
私たちは、ベビーカーやチャイルドシートのクリーニングも行っています。
赤ちゃんが使う物だから、きれいにしたい。
でも、自分で分解して洗うのは大変。
乾燥にも時間がかかる。
そもそも、どう洗えばいいのか分からない。
その困りごとがあるから、クリーニングサービスが生まれました。
しかし、クリーニングを始めると、次の問題が見えてきます。
ベビーカーやチャイルドシートを預けている間、お客様は何を使えばいいのか。
きれいにするだけでは、預けている期間の不便は解決できません。
だったら、代わりの物を貸せばいい。
そこから、代替品の貸し出しや、ベビー用品のレンタルへと広がりました。
新規事業を思いついたというより、
一つの困りごとを解決した先に残っていた、次の困りごとを解決しただけです。
困りごとの解決範囲を広げてきた
振り返ると、私たちがやってきたことは、すべて同じです。
品物をきれいにする。
想いを残せるようにする。
写真で相談できるようにする。
価格を事前に分かるようにする。
店舗へ来なくても依頼できるようにする。
営業時間外でも預けられるようにする。
預けている間に困らないよう、代替品を貸し出す。
それぞれ別のサービスに見えます。
でも、私の中ではすべて、
お客様の困りごとを、どこまで解決できるか
という一つの考えから生まれています。
だから私は、クリーニング技術を売っているつもりはありません。
技術は、あって当たり前の土台です。
私たちが提供しているのは、
大切な物に込められた想いを残すこと。それが、私たちのクリーニングサービスです。
そして、その価値を迷わず、安心して利用できる仕組みを作ることが社長の私の仕事です。
整理すると、
技術は土台。
想いを残せることがサービス。
LINEやEC、無人ロッカーは届け方。
明瞭な価格は、納得して選んでもらうための判断材料。
レンタルは、クリーニングした先に残った不便の解決。
これからも、クリーニング店らしくないことを始めるかもしれません。
でも、お客様の困りごとから考えた結果なら、私の中ではすべてクリーニング業(サービス業)の延長です。
きれいにするのは当たり前。
大切なのは、その先です。
今日の思考のクリーニング
「この記事を読んで、自分ならどう考えるだろう。」
思考を、クリーニングする場所。
次回予告
次回の市川思考録は、
「『内省』が2位だった。私は勉強ではなく、知識が好きらしい。」
2024年に受けたストレングスファインダーでは、「内省」が2位でした。
当時は分かったような、分からないような結果でしたが、数年経った今になって、なぜ自分が一つのことを延々と調べ、知識を集め、掘り続けるのか、ようやく腹落ちした話を書こうと思います。


















