こんにちは、市川博基です。
私がクリーニング店を楽天市場へ出店したのは、2006年頃のことです。
今では、インターネットでクリーニングを注文し、衣類を箱や集荷バッグに詰めて送る「宅配クリーニング」も珍しくありません。
しかし当時は、
クリーニングは、近所のお店へ持っていくもの。
それが当たり前でした。
そんな時代に、札幌の小さなクリーニング店が楽天市場へ出店しました。
最初から立派な事業計画があったわけではありません。
きっかけは、毎年行われていた春のセールでした。
売上30万円のために、広告費30万円
当時のクリーニング業界では、春の衣替え時期になるとセールのチラシを配るのが定番でした。
チラシを印刷し、近隣の住宅へポスティングする。
その印刷代とポスティング費用に、約30万円かかっていました。
そして、そのセールで増えた売上も約30万円。
売上が30万円あっても、それがそのまま利益になるわけではありません。
そこから人件費、洗剤、溶剤、光熱費などがかかります。
どう考えても赤字です。
その状態が、2年続きました。
前年も春のセールをしたから、今年もやる。
クリーニング業界では、春にチラシを配るのが当たり前だからやる。
でも、数字を見れば商売として成立していません。
私は思いました。
これ、何のためにやっているんだろう。
30歳までは、父の言うことを聞く約束だった
当時、私は父と、
「30歳までは、父の言うことを聞く」
という約束をしていました。
父のやり方にすぐ反発するのではなく、まずは言われた通りに働き、仕事を覚える。
そういう意味だったのだと思います。
約束した以上、基本的には父の方針に従っていました。
でも、赤字だと分かっている方法を、
「前年もやったから」
という理由だけで続けることには納得できませんでした。
父の言うことを聞く。
でも、
赤字を続けることまで、黙って受け入れるのは無理でした。
そこで私は父に、
「今年もチラシに30万円を使うなら、その30万円を楽天市場への出店に使わせてほしい」
と話しました。
同じ30万円を使うなら、また同じ結果になる可能性が高いチラシより、新しいことを勉強するために使いたかった。
成功する保証はありません。
インターネットでクリーニングを注文する人が、本当にいるのかも分かりません。
それでも、前年と同じことを繰り返すよりは、やってみる価値があると思いました。
クリーニングを売れないなら、集荷袋を売ればいい
楽天市場へ出店しようとすると、最初から問題がありました。
当時の楽天市場では、クリーニングのようなサービス、いわゆる「役務」を、クレジットカード決済でそのまま販売することができませんでした。
クリーニングサービスを売れない。
だったら、商品を売ればいい。
そこで考えたのが、
「衣類10点をクリーニングできる集荷袋を販売する」
という方法でした。
商品名は、
「まとめ10(テン)」
です。
お客様には、楽天市場で集荷袋を購入してもらう。
届いた袋へ衣類を10点まで詰めて、私たちの店へ送ってもらう。
私たちは、その衣類をクリーニングして返送する。
表向きに販売している商品は集荷袋。
しかし、その袋には10点分のクリーニングサービスが付いている。
今では宅配クリーニング業界で、
「衣類10点でいくら」
という料金体系は、かなり一般的になりました。
でも、私が楽天市場へ出店した当時、楽天市場に出店しているクリーニング店は、私の知る限りほかにありませんでした。
そもそも、楽天市場でクリーニングを販売している店自体がなかったのです。
だから私は、
宅配クリーニングの「10点パック方式」を作ったのは、自分だと思っています。
少なくとも、楽天市場では私が最初だったと、ほぼ断言できます。
もちろん、自称です。
誰もやっていない時代に、
「クリーニングというサービスを売れないなら、10点分のクリーニングが付いた集荷袋を商品として売ればいい」
と考え、「まとめ10」を作りました。
このときに作った「まとめ10」は、形を変えながら現在も楽天市場で販売しています。
衣替えが終わると、月の売上は1万円
楽天市場へ出店したのは1月でした。
4月から6月の衣替え時期には注文が入りました。
インターネットでも、クリーニングを注文してもらえる。
自分の考えは間違っていなかった。
そう思いました。
ところが、衣替えの時期が終わると、注文が止まりました。
月の売上は約1万円。
つまり、月に1件程度です。
一方、楽天市場の出店料は、記憶では月3万円ほどだったと思います。
売上より出店料の方が高い。
そのまま続ければ、また赤字です。
普通なら、
「やっぱり、インターネットでクリーニングなんて無理だった」
と考えて、撤退していたかもしれません。
でも、楽天市場へ出店したことで、次の問題が見えました。
クリーニングは、衣替えの時期にしか注文されにくい。
それなら、衣替え時期以外にも、お客様との接点を作ればいい。
クリーニング屋が、ダウニーを398円で売った
当時、大流行していたのが、海外製の柔軟剤「ダウニー」でした。
そこで私は、ダウニーを小分けを仕入れて、
4種類×2袋を398円・送料無料
で販売しました。
クリーニング屋が、楽天市場で柔軟剤を売る。
一見すると、本業とは関係のないことを始めたように見えるかもしれません。
でも、私の中ではつながっていました。
クリーニング屋なんだから、柔軟剤を売ったっていい。
そして、ダウニーを購入してくださったお客様へ、宅配クリーニングのチラシを同梱しました。
まず、市川クリーニング商会という店を知ってもらう。
そして翌年、衣替えの時期になったときに思い出してもらう。
ダウニーだけで大きな利益を出そうとしたわけではありません。
398円の商品をきっかけに、将来クリーニングを利用してくださるかもしれない人との接点を作ったのです。
今で言えば、見込み客を集めるための商品だったのだと思います。
仕入資金がなかったので、妹から30万円借りた
ただ、ここにも問題がありました。
クリーニング業は、普段それほど大きな仕入れをしません。
お客様から品物を預かり、自社の設備と技術を使って加工する仕事だからです。
そのため当時の私には、商品をまとめて仕入れるための資金がありませんでした。
ダウニーを販売したくても、最初の仕入れができない。
そこで、実の妹から30万円を借りました。
父からは、例年チラシへ使っていた広告費30万円を、楽天市場への出店費用として回してもらう。
妹からは、商品を仕入れるための30万円を借りる。
今振り返ると、家族からお金を出してもらいながら始めた、小さな挑戦でした。
最初から余裕があったわけではありません。
成功する確信があったわけでもありません。
ただ、
今までと同じことを続けるより、試してみたかった。
それだけです。
翌年、売上100万円を突破した
ダウニーを買ってくださったお客様へ、宅配クリーニングのチラシを入れる。
市川クリーニング商会の存在を知ってもらう。
そして翌年の衣替え時期、宅配クリーニングの売上は100万円を突破しました。
この取り組みは、楽天市場が発行していた冊子でも、成功事例として紹介してもらいました。
あれから約20年。
最初は月に1件しか注文が入らなかった楽天市場店ですが、2026年3月度には、
楽天市場の月間優良ショップを通算22回受賞
するまでになりました。
最初から、この未来が見えていたわけではありません。
楽天市場へ出店した。
衣替え時期には売れた。
衣替えが終わると、月1件になった。
その問題を解決するために、ダウニーを売った。
購入してくださった方へ、宅配クリーニングのチラシを入れた。
翌年、クリーニングの注文につながった。
その一つ一つを積み重ねた結果が、今につながっています。
正解が分かってから、始めたわけではない
今振り返ると、楽天市場への出店は正解だったと思います。
でも、始めた時点では、正解かどうかなんて分かりませんでした。
衣替えが終わって、月の売上が1万円になったときは、失敗に見えたはずです。
それでも、出店したから、
「衣替え時期以外には売れない」
という問題が見えました。
問題が見えたから、
「柔軟剤を売って、お客様との接点を作ろう」
という次の方法を考えられました。
正解が分かってから始めたのではありません。
始めたから、次の正解が見つかったのです。
春のセールのチラシが続いていたら、毎年同じ30万円を使い、毎年同じ結果を見ていたかもしれません。
父との約束を守り、何も言わずに従っていた方が楽だったかもしれません。
でも、数字を見て赤字だと分かっているのに、
「今までやってきたから」
という理由だけで続けることはできませんでした。
だから、父に反発しました。
そして今でも、新しいことを始めるときには同じように思います。
成功するかどうかは、やってみなければ分かりません。
失敗したら、また変えればいい。
まずは、
とりあえず、やらせてよ。
今日の思考のクリーニング
「この記事を読んで、自分ならどう考えるだろう。」
思考を、クリーニングする場所。
次回予告
次回の市川思考録は、
「Googleレビュー★1から学んだこと。」
電話で問い合わせができない。
LINEを使っていない人は利用しにくい。
そうした理由から、Googleレビューで★1を付けられたことがあります。
それでも私は、電話対応を復活させようとは思いませんでした。
低評価へ反論したいわけではありません。
全員に好かれるサービスは作れない。
では、誰のために、どんな仕組みを選ぶのか。
一つの★1レビューから考えたことを書こうと思います。

















